Language

建築探訪のご紹介

建築探訪では、弊社スタッフ数名で話題の建築スポットを巡ります。青山・表参道エリアを中心に巡りました。その中から、特に印象に残った建築をいくつかご紹介します。

①紀尾井清堂

今回の建築探訪のメインスポット。2023年以来の一般公開で、内藤さんの手記やスケッチ展示もあり、開場前から長蛇の列ができるほどでした。RC打ち放し(杉板型枠)のキューブを4本の柱で支え、外周をガラス(PPG構法)で包む構成。マッシブな塊が浮かび、静けさと緊張感が同居しています。
トップライトから差し込む光が内部空間を満たし、シンプルな素材が繊細なディテールで美しく仕上げられていました。

展示されたスケッチからは、手を動かして考えることの大切さを実感しました。一般公開の機会は限られるため、ぜひ一度訪れて体感してほしい建築だと思います。

設計:内藤廣建築設計事務所
竣工:2020年12月
構造:RC造、一部S 造 地下1階・地上5階
延床面積:1,287.83㎡

② FROM 1st

青山界隈にファッションやインテリアショップが増えるきっかけとなった、元祖ファッションビルです。レンガタイル貼りの外壁は重厚ながら、45度に傾斜をつけたハイサイドライトとバルコニーが街並みにやわらかく溶け込んでいました。内部は回廊とデッキが入り組む吹き抜け構造で、今治タオルの店舗では心地よい採光が得られていました。
現地を訪れた後に図面を拝見しましたが、CADのない時代にこの複雑な設計を成し遂げており、狂気すら感じます(褒め言葉です)。

設計:山下和正建築研究所
竣工:1975年
構造:RC造、一部S造 地下2階、地上5階
延床面積:4,905.7㎡

③ IDEALビル

南青山にある、NAPの中村拓志さんが手掛けた商業ビルです。公開されているのはテナントエリアのみで、上階には能楽堂とオーナー住宅があります。秘密のヴェールに包まれたオーナー邸、実に興味深いです。

観世流に由来する観世水(かんぜみず)をモチーフに、ブルーグレーの大理石や流紋をイメージしたサッシ、左官(挟土秀平)、アート(コシノジュンコ)などが随所に取り入れられています。ファサードの樹齢300年のオリーブは、プランツハンター西畠清順さんによるものです。

設計:中村拓志&NAP建築設計事務所
竣工:2023年5 月
構造:S 造、地下1階、地上4階 ※4階は一般非公開の舞台とのこと。

④ GREEN TERRACE 表参道

裏参道に新たに誕生した商業ビルです。延べ面積は思ったより小さいですが、テナントに寄り添う積層された空中庭園と回廊により、一回り大きく感じました。グレーがかった赤褐色の外壁とブロンズの配色が可愛らしく、大人っぽいニュアンスもあります。
立体感のある屋上緑化は種類豊富で、最上階の菜園では同階のジェラート屋さんが使う野菜も育てられていました。

設計:ツチヤタケシ建築事務所
竣工:2024年12月
構造:S 造、一部RC・SRC 造 地下1 階、地上4階
延床面積:786㎡

⑤ 表参道ミナガワビレッジ HIGUMA Dounghnuts Coffee Wrights

DIYや度重なる増築、法改正により違法・既存不適格状態だった家屋を、1敷地4建物から1敷地1建物へ設計変更し、確認済証を取得しました。新築では成し得ない、土地と建物の記憶を継承した建物で、非常に見る価値があります。

設計:再生建築研究所(建築)・chab design(店舗内装)
竣工:2018年5月
構造:木造 地上2階
延床面積:425.96㎡

⑥ 都営北青山三丁目アパート

青山北町アパートの解体跡地に建てられたタワー型都営住宅です。敷地内には『ののあおやま』が運営され、超高層賃貸タワーやサ高住、芝生広場やビオトープなどの広域ランドスケープ空間があります。エントランスはノンセキュリティで、3層ごとにコミュニティテラスが設けられています。入居条件は厳しいものの、眺望と立地を最大6万円程度で享受できる注目の物件です。

設計:日本設計
竣工:2019年12月
構造:RC 造、一部S造 地上20階
延床面積:21,367㎡

⑦ GAギャラリー

建築探訪の締めくくりはGAギャラリーでの『第33回 現代世界の建築家展』でした。専門学校時代の恩師が鈴木恂さんの事務所に在籍しており、学生時代は鈴木建築の模写製図を何度も行ったことを思い出します。
開口部のサッシュワークは独特で、古くてもなお洗練された魅力があります。展示は非常に充実しており、コンペに参加したくなる刺激的な内容でした。

設計:鈴木 恂
竣工:1983年10月 ※高層棟5F建部分は1972 年12月竣工のFUビル
構造:RC造、地下3階、地上2階
延床面積:308㎡

朝から夕方まで、多くの建築を巡ることができました。目的の建物へ向かう道中でも、思わぬ建物に出会うことがあり、東京が建築の宝庫であることを改めて実感しました。建築の新陳代謝の速さは世界でも随一でしょう。

同じ建物でも、人それぞれ視点や好みが異なりとても興味深かったです。年齢に関係なく、良い建築には夢中になれるし、体験が記憶に深く刻まれます。今後も建築探訪企画を続け、参加者が徐々に増えて盛り上がればと思います。

All News